入学式式辞(R6.4.9)

令和6年度 松江市立皆美が丘女子高等学校 入学式  校長式辞

校舎へとなだらかに続く坂道の桜の木々が柔らかな雨に浸り、花びらから滴る雫が美しく彩りを添えています。かつて本校卒業生が松江市の観光プランの象徴として「縁雫(えにしずく)」と銘打った、新しい縁(えにし)の到来を予感させる今日のよき日、令和6年度入学式を挙行するにあたり、松江市長 上定昭仁様、PTA会長 渡部知和様をはじめ、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜り、心温まる式を挙行できますことは、本校の教職員ならびに在校生にとって大きな喜びであります。高所からではありますが、ご臨席いただきました皆様に心からお礼申しあげます。

 保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。併せて本校での学びに信頼と期待をもってお子様をお預けいただきますことに深く感謝いたします。本校は、県内唯一の女子高であるとともに、中四国で唯一の公立女子高等学校です。私達教職員一同、女子高ならではの強みと特性を生かし、高校生となるお子様の成長を促していきます。とはいえ、「生みの苦しみ」の言葉通り、成長過程では悩みや苦しみに直面することも多くあることでしょう。ご家庭におかれては、お子様を物心両面でしっかりと支え、いつでも安心できる居心地のいい、いつでも頼って行ける場所であり続けていただきたいと思います。そうした温かな家庭と時には厳しくもある学校とが緊密な連携を図り、お子様の育ちをサポートしていきたいと考えます。私達教職員は、お子様が自らの生きる道を切り開いていけるよう、全力で支援してまいります。保護者の皆様におかれましても、本校の教育方針を十分にご理解いただき、ご支援とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

 只今入学を許可しました八十二名の新入生の皆さん、入学おめでとう。本校は、昨年度に創立七十周年を迎えた、伝統ある全日制女子高校であり、令和3年度に立地する「皆美が丘」を校名に入れて新たなスタートを切ってから4年目となる、まだ新しい学校でもあります。遡ること七十年ほど前に、松江市で「女子教育の機会が奪われてはならない」と行動を起こした人々の強い思いをもって開校した本校には、他の共学校とは異なる特色や、活力と熱気があります。ぜひ、志を持って本校の門をたたいてくれた新入生の皆さんと、在校生が力を合わせて、女子高ならではの魅力に満ちた学校となるよう努めてほしいと願っています。

 さて、今日は、皆さんを迎えるにあたり、皆美が丘女子高生として期待することを2点お話します。

1点目は、本校の校訓や校歌に込められた思いをしっかりと理解し、確かに学び成長してほしいということです。

本校の校訓は、「より広く より高く」を掲げ、平成15年に制定された比較的新しいものです。知識を得て心や視野を広げ、それを積み重ねて、知性や人格の高まりをめざそうというメッセージであり、富士山のごとく、裾野をしっかりと広げてゆるぎなく美しくある姿をイメージしています。「より~」とあるように、現状に満足せず、少しでも一歩でも前へ、先へと進みゆく、そんな生徒たち、あるいは学校でありたいと思っています。そこに女子高の強みを生かすべく、本年度はさらに「より麗しく よりしなやかに」を掲げてスタートしています。立ち居振る舞いの点で「麗しさ」を、柔軟性や打たれ強さの点で「しなやかさ」を大切に、昨日や今よりも成長してゆく皆さんであってほしいと願っています。そして、校歌。「嵩の峰」、「出雲野」といった豊かな自然に包まれたここ「皆美が丘」の学び舎で、つねに「生命(いのち)を賛え、「英知」を磨き、「理想」を掲げていこうと呼びかける校歌。皆さんを支えてくれる絶好の環境の中で、集う友とともに確かに学び、しっかりと成長を遂げてくれることを心より願っています。

2点目は、本校の魅力をさらに高めるために、圧倒的に強化したい3つの資質・能力について、皆で協力して高めあってほしいということです。

その3つの資質・能力とは、Performance、Hospitality、Communicationです。パフォーマンスは、身につけたものを外に表すこと、見せ方。ホスピタリティは、心からのおもてなし、深い思いやり。コミュニケーションは、お互いの意思疎通や感情的なつながり。それらはすべて、自分自身だけではなく、他者を意識したときに発揮され高まってゆくものであり、自らの意志で取り組む部活動はもちろん、日々の授業や「まつえ学」等の地域の人・モノ・コトと関わる学習の機会など、あらゆる場面や機会を通して、3つの力を高めていきましょう。

学びや体験など、個人として自然とできることには限りがあります。もちろん全ての活動は最終的に個々の意志や姿勢に帰結しますが、その過程では様々な工夫が可能です。わけても協働的な取組は、新たな気付きや思考の深まりを促し、成長の契機となることも多いものです。縁あって集った仲間達とともに、話し合いや学び合い、支え合いや分かち合い、認め合いや高め合いを様々な場面で重ね、互いに成長しあってほしいと思います。授業や探究的な学び、部活動や生徒会活動、地域の人々との交流活動など、多様な体験のできる本校で、臆することなく果敢に挑戦してください。誰にも等しく挑戦の機会は与えられます。挑戦するか否かは、本人の意志次第です。そして、挑戦の機会を生かし、次につなげていく、つまり体験を経験に昇華させることがさらに大切です。積極果敢に多様な経験を積み重ね、人としての総合的な成長を促進させてください。

 結びに、今皆さんが見ている女子高は皆さんの女子高ではなく、先輩たちが築いてきた女子高です。皆さんの女子高はまだどこにもありません。これから皆さんが、ここにいる仲間や同志とともに、自分たちで日々作っていくのです。皆さんの夢が志にまで高まり、活力と熱意をもって高校生活を送られんことを祈念し、また学校と地域が一体となってしっかりと皆さんを支えていくことをここに約束し、式辞といたします。

令和六年四月九日  松江市立皆美が丘女子高等学校 校長 多々納 雄二

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